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そんな兄の影響があったのかもしれない。
夏奈がふり返ると、智樹(ともき)は城崎と何か話をしていた。
「夏奈」
こちらに気づいた智樹が呼ぶと、城崎は気まずそうに顔を背け倉庫のほうへ逃げるように歩き出した。
「なに」
ぶっきらぼうな言い草に智樹は苦笑すると、バッティング用ネットを指差した。
「ちょっと付き合えよ」
「なんで私が」
「夏奈にも交代で打たせてやるから。な?」
人気のおもちゃを貸出すような口ぶりに、夏奈は複雑そうに口を曲げる。
そう言われると弱い。ひと月前くらいからレギュラーや控え選手たちを重点的に練習させるため、その他の部員はサポートに回ることが多い。だから、どうしても野球らしい練習から離れてしまうのだ。
「わかった」
バットケースから智樹がよく使う銀色のバットを引き抜き、グラウンド脇にあるバッティング用ネットまで持っていった。
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