鷹に攫われて

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「どうしよう。無理してでもスーパーに行こうかな……でも」  大人四人がかりでも制止がきかない怪物が何十体もたむろしているような場所には行きたくない。そんな光景を見てしまったら今度こそ立てなくなってしまう。そうなればあとは死ぬだけだ。  余り物でも手に入ればと思ったのだが……余り物?  はっとして周囲を見回す。ここは街の外れにある閑静な住宅街。だった場所。立ち並ぶ家々は息を止めたようにひっそりと佇んでいる。  もしかしたら、食料が残ってるかもしれない。  確かに可能性はゼロではない。早々に家主がこの世からなんらかの理由でドロップアウトしてしまったりすれば、家の中には物資が残っている筈だった。スーパーや街に行くよりも比較的安全で、これだけ近ければアパートの自室へ緊急退避もできる。  ふっと、気が楽になった。  この方法ならしばらくはなんとかなる。物資が安定してきたら荷物をまとめ、民家を転々として少しづつでも移動すればいい。  公共の避難所はあの日から三日でゾンビが溢れたそうだ。だから目指すのは避難所じゃない。それよりも、まず見つけなければならないのは他の生存者だ。出来れば女性が大多数を占めるようなグループがいい。いや、これは欲張り過ぎか。  掲示板の住人は他人を信じるなと言っていた。とはいえこの状況では数こそ力である。友好的な協力者の存在はなんとしてでも欲しい。  私は意を決して行動することにした。
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