鷹に攫われて

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 最悪だ。辛うじて生きていた水道の水を飲み干してため息がこぼれる。ある程度のことは覚悟してはいたがそれでもこの家は酷すぎた。  食料と呼べるものが一切ない。調味料の類に至るまで食せるものがごっそりとなくなっている。しっかりと準備をしてから避難した風だった。  これはもう数をこなすしかないだろう。玄関口まで戻ってきてまたため息が出る。ゾンビのいるかもしれない民家をしらみ潰しに当たるのはまるでリアルマインスリーパーをやってるみたいだ。 「あ。でも」  靴を履こうとして思いとどまる。食料にはありつけなかったが、衣類や生活用品は手に入るのではないか。そういう物資で一番欲しいものといえば、やはりアレだろう。  私は考える。自分がこの家に住んでいたら、アレはどこに保管しておくか。トイレにおくのが早くて便利だがこれだけ綺麗好きな家庭の主婦が異性の目のつく場所に備えているとは思わない。  たしか倉庫部屋があったはずだ。いままで気付かなかったから見落としていたけど、探せば見つかるのでは? ここまで来ておいて収穫なしでは帰れない。私は踵を返して目的の部屋に向かった。
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