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安田が麺をくわえたまま顔を向けてくる。
「野球バカらしくて。」
「てめっ。お前も野球バカにしてやるからな、覚えてろよ。」
俺はそれには答えず、ラーメンの器を両手で支えてスープを飲んだ。熱くてしょっぱいスープが喉を駆け抜けていく。部活後の体にはこれくらいのしょっぱさがちょうどいい。
安田も俺と同じ様に器を持ち上げて、スープをごくごくと喉を鳴らしながら、飲み始める。安田のあまりの勢いに俺はちょっと心配になる。
「おい、全部飲むのかよ。」
「おぉ。」
器から顔を上げずに安田は答えると、最後のスープを飲みきってからテーブルに器を戻した。
「すげぇな。」
「は?何が?」
俺はスープを半分残し、箸を置いた。俺が空になっていた安田のコップに水を注いでやると、安田はそのコップの水も勢いよく飲み干した。
「はぁー。くったー!!ごちそうさまです!!」
「ごちそうさまです。」
二人でカウンターに器を戻し、席を立った。
店を出ると既に日は暮れ、夜の香りが満ちていた。冷たい風がラーメンで温まった体に心地良い。
「にしてもさー、今日のあれは傑作だったわ。」
安田が両手を上に突き上げ、大きく伸びをしながら、振り返ってきた。俺は安田が何を言いたいのか、すぐにわかった。
「だって、しかたないだろ。自然と出ちゃったんだからさ。」
俺は思い出して恥ずかしさがまた蘇ってきた。安田は「まー、この前までやってたからな・・・」と言いながらも思い出し笑いを始めた。
まぁ、俺だってやっちまったって思ってるから仕方ないけどさ。
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