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 俺がジャージに着替え終わると、ちょうど監督が部室に入ってきた。俺よりも少し背が低くて、肩幅の広い大柄な体つき。眼鏡の奥から鋭い視線が刺さる。俺は野生の熊にでも出会った心地だった。 「一年か?」  低くて大きな声で聞かれ、俺は正直、野球部にしたことを後悔しそうになった。でも、今更、逃げるわけにもいかない。俺はお腹に力を込めて、できるだけ大きな声を出した。そうでもしないと、逃げ出したい気持ちに負けそうだった。 「一年二組、藤倉大地です。入部希望です。」 「入部希望?仮入部期間は昨日までだぞ。仮入部には来てなかったよな。」  熊の声が更に大きくなる。恐ぇって。 「仮入部期間には参加していませんが、今日から野球部に入りたいと思っています。」  俺は熊の鋭い視線から目を逸らさずになんとか答えた。 「そうか、わかった。じゃあ、一年は外で先に準備してるから、お前も混ざれ。全員揃ったところで、紹介してやる。」 「はいっ。宜しくお願いします!」  俺は大げさにお辞儀をしてから、監督の入ってきた扉へと向かう。監督の横を通り過ぎようとした時、「っっ!!」声にならない声を上げ、監督を振り返った。 「いいケツだ。使えそうだな。」  熊が初めて笑った。俺はなんと答えてよいか分からず、逃げる様に部室から出て行った。今、思いっきりケツ触られたよな。俺は早くも野球部への入部を後悔していた。
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