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ここに集まった時、全員の表情は固かった。
小野田を責める者はいなかった。
むしろ、全員が自分自身を責めていた。
小野田の負担に気づけなかった自分を。
援護となる点を取りに行けなかった自分を。
みんながどこかに理由を見つけて責めていたのだと思う。
だけど……
この試合中に起こった出来事は、誰かが一人で背負うものではないのだと、一人一人がそれぞれに背負うものでもないのだと、今、教えられたのだ。生意気で憎たらしい後輩によって。
俺はスッと息を吸い込み、小野田にまっすぐ視線を向けた。
「小野田、ナイスピッチングだったよ。正直今までで一番良かった。だから、あとは俺たちに任せてくれ」
小野田はうつむいたまま、小さく首を動かすようにして頷いた。
「……うん、頼んだわ」
そう言ってベンチへと戻っていく小野田の背中に、兵頭が大きな声で言った。
「こんなところで終わりになんてしませんから!」
その声に小さく肩を揺らしただけで、小野田は振り返らなかった。
俺たちは自分たちの肩にのしかかっていた空気を消し去るように、大きく息を吸い込む。
そして、ほんの一瞬だけ目を閉じた。
風が耳元で囁くように吹き抜ける。
目を閉じると気づくことがある。
瞼で覆われていても、決して真っ暗な世界にはならないということ。
光はまっすぐに降り注いでいるということ。
目を開けている時の方が気づかないのかもしれない。
この世界が、とても明るいということに。
やがて静かに広がった視界は、仲間の顔と熱い夏の空気で覆われていた。
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