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ノーアウトのまま、ランナー一、三塁。
三塁ランナーは、隙さえあればいつでも俺の足元を狙って飛び込んでくるだろう。
ジリジリとリードを広げてくるランナーに俺と兵頭が同時に視線を向ける。
一瞬、ランナーの動きが止まる。
兵頭は俺のサインに驚くことも、ためらうこともなく頷いた。
まずはバッターの予想を、そしてランナーの予想も外させる。
たとえ三塁にランナーがいようと関係ないと、思わせてやるのだ。
まっすぐ飛び込んできたボール。
スピードに乗ったボールは、見逃されるか、振り遅れるか……もしも捕らえられたら、それこそ勢いよくスタンドに向かっていくだろう。
バッターが強く踏み込んだ。
バットが向かってくるボールを迎え撃とうと空気を切り裂いていく。
兵頭が投げたボールは、スピードを落とすどころか、加速するようにバッターの手元で伸びた。
バットはそのボールの動きについていくことはできなかった。
ズバンッッ!!!
今まで感じたこともないような衝撃が俺の手のひらを貫通し、これまでとは比べものにならないような音を響かせて、ボールは俺のミットに飛び込んだ。
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