63ー5

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   ノーアウトのまま、ランナー一、三塁。  三塁ランナーは、隙さえあればいつでも俺の足元を狙って飛び込んでくるだろう。  ジリジリとリードを広げてくるランナーに俺と兵頭が同時に視線を向ける。  一瞬、ランナーの動きが止まる。  兵頭は俺のサインに驚くことも、ためらうこともなく頷いた。  まずはバッターの予想を、そしてランナーの予想も外させる。  たとえ三塁にランナーがいようと関係ないと、思わせてやるのだ。      まっすぐ飛び込んできたボール。  スピードに乗ったボールは、見逃されるか、振り遅れるか……もしも捕らえられたら、それこそ勢いよくスタンドに向かっていくだろう。  バッターが強く踏み込んだ。  バットが向かってくるボールを迎え撃とうと空気を切り裂いていく。  兵頭が投げたボールは、スピードを落とすどころか、加速するようにバッターの手元で伸びた。  バットはそのボールの動きについていくことはできなかった。  ズバンッッ!!!  今まで感じたこともないような衝撃が俺の手のひらを貫通し、これまでとは比べものにならないような音を響かせて、ボールは俺のミットに飛び込んだ。
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