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「ストライク!」
真後ろの球審の声をかき消すように、球場中から歓声が上がる。
空気が動くのを、はっきりと肌で感じる。
表示された球速に、さらに観客がざわめいた。
ドクンッ……
バッターは空振り、ランナーは塁から動くことさえできない。
球場中の視線は目の前の兵頭に注がれている。
これは、俺が望んだ光景そのものだ。
それなのに、どうしてだろうか、俺の心臓は大きな音を立て、そして指先は小さく震えていた。
これが、兵頭の「今」の全力。
じゃあ、この先は……?
小野田のようにギアを上げたら、どこまでいくんだ?
ドクンッ……
再び大きく音を鳴らした心臓が、俺の頭の中で小さな痺れを起こさせた。
俺は、本当に、ついていけるのだろうか……???
こわい。
兵頭に対して、初めて思ったかもしれない。
スコアボードの球速表示から、視線を移すとライトを守る篠崎の姿が目に入った。
今なら、あの時の篠崎の気持ちがわかる。
圧倒的な実力を前にした時、単純に喜ぶだけだった自分はなんて幸せなやつだったのだろう。
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