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だが、宵の箱庭は欠けている。中心にいるのは夜なのに、ある一部分が『ごっそり』と抜け落ちている。
宵に必要なのは夜だけだ、夜しか要らない。そう思っているのは嘘じゃないのに………
-〝欠けている〟のは、何故なのか-
だが、それを考えることさえ、宵には許されていない。まぁ、考えても答えなど出ないこと、なのであろうが………。
-てくてくと宛どもなく歩く。今回の任務の〝標的〟と、その周囲の情報は頭に中に入っている。
しかし。宵の仕事は『夜半過ぎから』。まだまだ早い時間である。
(ん~。腹ごしらえ、しといた方がいいかな?そう言えば。今朝から何にも、食べてなかったんだったっけ。)
宵の目先に、ちょうど『蕎麦処』と言う暖簾が掛かった店先が見える。特に食べたいものがあるわけでもないので、何の気なしにそこに入った。
店内の客はまばらだった。昼餉には遅く・夕餉には早い時刻故、仕方ないだろう。そもそも、ただの『蕎麦処』の客入りなどに興味はない。
何となく壁のお品書きを眺める。けれど、やはりこれと言って食べたいものはなかった。
元々、宵は好き・嫌いの類いの〝食への拘り〟などなかったのだし。
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