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刀さえ抜かず、ただ立っているだけの優男が『只者ではない』ことを瞬時に見抜いた。
(勝負は見えたな、力量が違いすぎる。
あのおっさんも、まずい相手に喧嘩売ったもんだ。)
惜しむらくは酩酊した浪人相手では、あの優男の本気の力量が見られぬことだろうか?
-宵は『強い者』が好きだ-
弱い者と言うのは、とかく〝悲劇の主人公〟ぶって己の非力さ・無力さを嘆くだけ。そのくせ自分では何一つ変わろうとしない。
嘆くべきは、己の非力さ・無力さではなく〝変わろうとはせぬ己〟であろう。
宵を含め、夜と夜の配下達は強い者だ。〝己を変える強さ〟を持った者達。勿論、宵も弱き者から、強き者へと変わった者だ。
宵自身、憶えておらぬことであろうが。『最愛のもの』の鮮血を浴びて、別人の様に変わったのだから……………。
そう、宵は憶えていないのだ。『最愛のもの』の鮮血を浴びたことも、その『最愛のもの』自身のことも………己のことさえも………
宵の罪も・罰も抱き締めて『最愛のもの』は忘却の彼方に眠っている。
-『あの日』から、ずぅっと-
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