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けれど、宵は憶えていない。いや、〝憶えていない〟ことさえも〝憶えていない〟のだ。
欠けた箱庭の…ごっそりと抜け落ちた記憶………憶えていないことの原因………。
普通は、失った過去を取り戻そうとするが、それさえも、宵は気にしたことがない。『忘れてしまった過去など、気にする必要はない』と。
-夜が『そう言ったから』だ-
宵にとっては夜の言葉が真実。例え、その言葉が本当は虚実であっても、宵には真実になる。
本当は『何』であろうとも。夜の言うことならば、宵は疑うことなく信じるのだろう。例え、嘘でも知らなければ真実となるのだ。
だから。知らないことは『罪』でなくとも、知ろうとしないこと・目を背けることは『罪』なのだ。
だけど、宵がそれに気付けない・気付かないのは、夜の所為じゃないし……宵自身の所為でもない。
-かつての『最愛の者』が、そう望んだから-
その者が宵の罪も・罰も抱き締めて、忘却の彼方に眠ることを願ったからだ。そう、全ては『宵の為』に。
宵の『魂』が罪に傷付くことがないように。
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