- 始まりの密命 -

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-文久三年 某月某日-  京の郊外に、ひっそりと深い森の木々に隠れるように建つ、大きな(やかた)があった。見たことない………言うなれば『洋館』と言った感じの、この時代にはそぐわぬもの。  いつから建っているのか、誰が建てたのかすらも不明だが、この舘に暮らす者達にとっては好都合なのであろう。 -だって。真っ当な生き方など、してはいな  いのだから-  ただの町民や農民ではない。かと言って、商人でもなければ武士でもない。決まった主を持たぬ、裏稼業集団。  それが、この舘に住む者達の生業。その内容こそ、かなりの多岐に渡るのだが………。 「───と言うわけだ。わかったかい?可愛い(よい)。」  この舘の中で一番広い部屋。この舘の主であり、裏稼業集団の長でもある男は、西洋風の大きな天蓋付きの寝台の上で上半身だけ起こし、腕の中に抱き締めている若者の耳元で、囁くように告げた。  程よく鍛えられた長身の美丈夫。漆黒の長い髪に闇色の瞳。歳の頃は『二十代後半』と言ったところだろうか。 「………うん。(よる)には、それが必要?そうすれば喜んでくれる?」
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