- 未知との遭遇?! -

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-数日後。京 市中-  結局。失神するまで夜に宵は、腰の〝鈍痛〟にまともに動くことができず(夜は嬉しそうに微笑っていた)、今日になって漸く(やかた)を出ることが出来た。  時刻は昼をとうに過ぎ、夕刻に差し掛かっていた。けれど、宵に与えられる任務は全て〝夜半(やわ)を過ぎてから〟のもの。然したる問題はない。  こうして市中を歩いている時の宵は、道行く人々となんら変わらない。何処にでもいる、普通の町人のようだ……… -その独特の雰囲気と、他に類を見ない秀麗  な容姿以外は-  現に、すれ違う人々(特に若い娘達)は頬を染めて、宵を振り返って見ているほどだ。  しかし、当の宵はどこ吹く風。興味さえも示さない。だって宵には『夜』だけだ、『夜』さえいれば他に必要なものなどない。  この心も躰も〝夜の〟。躰と技は、夜の傍にいる為の只の道具。何よりも尊ぶべきは、己よりも夜の身命(しんめい)なのだ。  夜の言葉(めいれい)は言霊………『神の託宣』にも等しい。夜こそが宵にとっての、この世の総て。  宵の世界は言わば、閉じた箱庭。その箱庭の中心にいるのが『夜』なのだ。
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