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街の見回りに出る時に着ている羽織を見て、男達は綾芽達の身上に気づいたらしい。
サッと身を翻し、その場から立ち去ろうとした者もいた。
しかし、そんな輩を彼らが取り逃がすはずがない。
「おい。てめぇ、どこへ行くつもりだ?」
「なつきしゃん! りゅー!」
劉さんが逃げようとした男の背に回り、腕をとって後ろで固めた。
助け出そうとした別の男も劉さんによって足払いされ、無様に地面に倒れこんだ。
「ふぉーーーーっ!」
初めて生で見た! 回し蹴り!!
劉さんの華麗な足技に魅了されていると、私の前にヌッと立つ影が二つ。
「おい。どこのどいつだ? 大人に向かって突っ込んでいきやがったのは」
「我らがいなかったらどうなっていたことか」
怖い。夏生さん、怖い!!
そんでもって、いつものごとく表情変わらないけど、アノ人も怒って……る?
「まったく。誰に似たんだか」
「我が妻だ。あれもよく不届き者に突っ込んでいく」
「おかーさん、こまってるひといたらたすけてあげなさいっていってた」
「助けてあげられるもんだけにしとけ。何でもかんでも突っ込んでいくんじゃねーよ」
「んー」
返事を曖昧にする私に、二度目を感じたのか、夏生さんはグリグリと両拳で私の頭を捻りあげてきた。
「わ、わかりました! もうしましぇん!!」
痛みに眉と鼻をしかめていると、ウフフと笑う声が傍から聞こえてきた。
そちらを見ると、さっきまで不安そうにしていたおばあさんが口元に手を添えて笑っていた。
……夏生さん達には怒られちゃったけど、良かったぁ。
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