夏といえばアレ

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 「ごめんなさいね、笑ってしまって。あんまりにも可愛らしかったから。……そうね。小さなヒーローさんにはお礼にこれをあげましょう」  おばあさんが私の前にしゃがみ、持っていた巾着袋から何やら袋を取り出した。  見覚えがあるその袋の中身は……。  「あっ!」  買ってくれてるーっ!!  それは私が瑠衣さん達と作ったミニ饅頭だった。  さっきも屋台の前でたくさんの人が集まってるのを見たけど、実際に買ってくれてる人を見ると本当に嬉しい!  「美味しくて有名な甘味処が出している屋台のものだから、きっとお嬢ちゃんのお口にも合うと思うわ」  「そのおみせしってましゅー」  ちなみに言うと、そこの店長さんも知ってるのー。  なんか、自分の知ってる人が褒められてるの聞くと、自分のことみたいにこそばゆいなぁ。  「……そうだっ!」  キョロキョロと辺りを見回すと、丁度空いたベンチが一つあった。  「おばーちゃん、まだおじかんありましゅか?」  「え? えぇ、大丈夫よ」  「あそこのベンチでいっしょにこれ、たべましょー」  「あら、嬉しいお誘いねぇ。それじゃあ、ご一緒させていただこうかしら」  えへへ。実際に食べてもらって感想聞きたいもんね。  男達に厳重注意とやらをするという綾芽達と別れ、私とおばあさん、それからアノ人は近くの空いたベンチに腰掛けた。
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