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「……あの、これって、巫女さんの格好ですよね」
目の前にあるのは、神歩が身に着けているのとおなじ白衣と袴。だが、袴の色が違う。神歩のは浅葱色だが、そこにあるのは緋色の袴だ。
「手伝うのは別にいいんですけど、なんでこうなるんですか?」
「ごめんね。これしか着てもらうものがなかったの」
「……どうしてもこれを着ないといけないんですか?」
「もちろんよ」
これ以上ないくらいの笑顔でうなずかれた。
「いくらなんでも、女の子の格好なんてできませんっ」
「そう、困ったわ。いちおう、恵子さんに聞いてくるわね」
そう言って、神歩は部屋を出ていった。
いちおうと言うからには、まあ、無理なのだろう。
いちおう待っていると、神歩はすぐに戻ってきた。
「女の格好で恥ずかしいのも、罰として受け入れろ。あの神体の鏡はな、現代の物の価値はよくわからんが、大きな家一個分はするものなんだぞ、だそうよ」
神歩はそう言って、舌をぺろっと出した。
「う、そうですか……」
すてきな人だな、と、ちょっと憧れをいだいている神歩にそんな態度をされては、さすがのヒロも嫌だとは言えない。
弁償するにしても、おそらく数千万円ものお金を払えるはずもなく、ヒロは仕方なしに受け入れることにした。
「はあ、わかりました。この格好で我慢します」
「うん、それがいいと思う。だってヒロくんの顔、女の子みたいでかわいいもの。巫女の格好も、きっと似合うわ」
「はあ……」
そんなことを言われても、困る。
「私は廊下で待っているから、着付けでわからないことがあったら呼んでね」
神歩は部屋の外へ出ると、ふすまをそっと閉めた。
もう、こうなったら着るしかあるまい。
ヒロは服を脱ぐと、白衣を着て、緋色の袴に足を通した。
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