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ほこりやら砂やら、落ち葉やらが積もっていて、境内の掃除は思った以上に大変だった。
「ヒロくん、その場所が終わったら、石段の方もお願いね」
「はい!」
誰かに頼られるのがこんなに嬉しいことだとは、ヒロは今まで知らなかった。
なぜだか、いつも以上に力が出て、自然と声も大きくなった。
「お、がんばってるな。初日からそんなに力を入れて、へたばるなよ」
ヒロが石段を掃こうとすると、恵子がのぼってくるのが見えた。
「いえ、だいじょうぶです。まだやれます」
「ほう、こりゃまた。別人のようにしっかりしてきたな」
恵子が感心の声をあげたのももっともな話で、現に当事者のヒロも、言われて初めて、自分がまるで別人のようにしっかりとしていることに驚いた。
「これも、その装束のおかげだな」
恵子はヒロがはいている、緋色の袴を指さした。
どうして着ている物が関係するのだろう、と思ったヒロは、疑問を口にした。
「それって、どういうことですか?」
恵子はほほえみながら、ゆっくりとうなずくと、言葉を発した。
「その袴にはな、神に仕える歴代の巫女の血と汗が混じっているんだ。だから、それを見につけていると、心が清らかになるのさ」
(歴代の巫女の、血と汗……)
汗はともかく、血は嫌だった。
この緋色の袴には、血で染められたと言われれば、なんだか信じてしまいそうな、怪しい美しさがある。
「ヒロくん、どう? あ、恵子さん。おかえりなさい」
そこへ、石段の掃除を手伝いに、神歩がやってきた。
「おう、ただいま。ちょっと休憩しようか」
恵子は右腕を持ちあげて、紐でくくられた箱をぷらぷらさせた。
「あ、お茶菓子を買ってきてくださったんですか! ありがとうございます。ヒロくん、お茶にしましょう」
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