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「もう一分たったかしら。ヒロくんも、見ているだけでは退屈でしょうから、急須から湯のみにお茶をついでもらえる?」
「は、はいっ!」
今度こそ、神歩にほめてもらおうと、ヒロは気合を入れた。
(急須にお湯をいれるのでさえ、あれだけの手間がかかったんだ。だったら、湯のみにつぐときも、特別なやり方があるはず)
ひろは、うーんと考えた。そこで、湯のみを揺すると苦いのが出るという言葉を思い出し、ぴんときた。
「それだ!」
そうとわかれば行動あるのみ。
ヒロは急須を手にすると、湯のみに均等に回しいれた。
こうすれば、つぐときに苦いのが出てしまったとしても、ひとつにかたまることはないはずだ。
つぎ終わると、神歩は手を叩いてほころんだ。
「えらいわ、よく気づいたわね。そうすれば、お茶の濃さが均等になるのよ」
神歩の笑顔をうけて、ヒロも得意そうに笑った。
「でね、もっといいこと教えてあげる」
神歩は急須をかたむけて、最後の一滴を、ちょぴんと湯のみに落とした。
「こうしておけば、お茶の葉の香味が残って、二煎、三煎までおいしくいただけるのよ」
その教え方はとてもていねいで、ほめて伸ばすということの代表みたいだ。
ヒロは神歩の笑顔を見ながら、そんなことを思った。
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