0人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ
「おっと、もう五時か」
恵子の言葉を受けて時計を見てみると、確かに午後の五時をさしていた。
お茶のおかわりも飲み終わり、赤福もすっかりなくなっている。
ちなみに、食べた比率は、神歩が五で、ヒロが三、恵子が二といった具合だ。
「ヒロ、今日はもういいぞ。家に帰って、宿題でもしとけ」
嫌なことを思い出させるものだ。
ヒロは、はぁ、と息をついて、よいしょと腰をあげた。
「あ、袴を畳まないといけないよね。私も行くよ」
好きなものを好きなだけ食べたので、神歩はすっかりご機嫌だ。
ヒロは神歩に教わって緋色の袴を畳むと、畳紙(たとうがみ)という白い包みに袴を収めた。
それから、恵子に挨拶をして、美島神社を後にした。
家に帰ってからは、じいちゃんとばあちゃんに一日中外で遊んでいたと言っておいた。
さすがに、神さまと会っていた、なんて言えるわけがない。
これから、毎日外へ遊びに行くよ、と言ったら、入れ歯が外れるくらい喜んだ。
ああ、じいちゃん、入れ歯だったのか……。
ヒロは、ちょっとがっかりした。
最初のコメントを投稿しよう!