一話 ぼくが巫女さんに

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「おっと、もう五時か」  恵子の言葉を受けて時計を見てみると、確かに午後の五時をさしていた。  お茶のおかわりも飲み終わり、赤福もすっかりなくなっている。  ちなみに、食べた比率は、神歩が五で、ヒロが三、恵子が二といった具合だ。 「ヒロ、今日はもういいぞ。家に帰って、宿題でもしとけ」  嫌なことを思い出させるものだ。  ヒロは、はぁ、と息をついて、よいしょと腰をあげた。 「あ、袴を畳まないといけないよね。私も行くよ」  好きなものを好きなだけ食べたので、神歩はすっかりご機嫌だ。  ヒロは神歩に教わって緋色の袴を畳むと、畳紙(たとうがみ)という白い包みに袴を収めた。  それから、恵子に挨拶をして、美島神社を後にした。  家に帰ってからは、じいちゃんとばあちゃんに一日中外で遊んでいたと言っておいた。  さすがに、神さまと会っていた、なんて言えるわけがない。  これから、毎日外へ遊びに行くよ、と言ったら、入れ歯が外れるくらい喜んだ。  ああ、じいちゃん、入れ歯だったのか……。  ヒロは、ちょっとがっかりした。
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