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血管がそうめんになるくらい、たくさん食べさせられたヒロは、Tシャツに半ズボンという格好でごろごろしていた。
「ほれ、玉遊びをするべ。ヒロと遊ぼ思って、特別に用意したんだぞ」
じいちゃんがなにか言っている。見ると、サッカーボールを手に持っていた。
コンビニがないくらいだから、お店なんかも一切ない。この島でそういうのを買うのは簡単じゃないのだ。
それでも、きっと孫が喜ぶだろうと思って、わざわざ買ってくれたのだ。
「ほれ、ヒロ。家にこもってないで、外で遊ぼや」
いつまでも起きあがろうとしないヒロを、じいちゃんはじっと見おろしている。
ヒロは思う。正直なところ、迷惑なのだ。
なにしろ、夏休みである今は夏まっさかり。この暑いのに動きたくなんてないし、ましてや外になんて行きたくない。
でも、そんなことを言って、じいちゃんが悲しそうな顔をするのはもっと面倒だったので、ヒロは仕方なしに腰をあげた。
そこへばあちゃんが、あれまあ、という顔をして部屋に入ってきた。
「じいさんや、お昼の後はテレビを見るって、約束していたじゃないですか」
じいちゃんは、ハゲた頭をぴしゃっと叩いた。
「あいや、そうだった」
それから、すまなそうな顔でヒロの顔をうかがった。
ヒロはじいちゃんとばあちゃんに気を使われている。
それはまあ、そうなのだろう。ヒロは大人しい性格なのだ。
元気がなくて、暗い子どもだっていう自覚はある。それを、周りが心配してくれているのはわかる。
でも、別にそのことで困っているわけじゃないから、そっとしておいてほしいと思う。
妹の夢奈とは違って、もう赤ちゃんじゃないのだから。
「だがなあ、ばあさんや。たった今、ヒロと玉遊びをする約束をしちまったんだがなあ」
じいちゃんは、まだ困ったふうに、ちらちらとヒロの顔を見ている。
それがたまらなく嫌で、ヒロはじいちゃんの手からボールを取りあげた。
「いいよ。ひとりで遊んでくる」
そう言うと、じいちゃんとばあちゃんは、用意していたような笑顔で、にっこりと笑った。
「そうかそうか。気をつけてな」
ヒロは、帽子と水筒を持たされて、家から出された。
(もしかして、ぼくを外へ追い出したかったのかな……)
そう思うことも、そういうふうに考える自分のことも嫌になって、ヒロはかけ出した。
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