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誘われるまま、ヒロは社務所(主に、神社の事務をおこなう場所)の中へ通された。
四角い机の上に、湯のみが三つ置かれ、熱そうな湯気を立てている。
「あいにく、お茶菓子はきらしているみたいなの。ごめんなさいね」
そう言ったのは、青色の髪の人が呼んだ女性だ。
白衣と、浅葱色の袴をはいていて、神社の神主のような格好をしている。
長い黒髪には真っ赤なリボンが結わえてあって、顔立ちも上品で美しく、ヒロはどきどきした。
「いえ、そんなの、ぜんぜん平気ですっ」
「なーに赤くなってんだか」
ぼくにげんこつを落とした青色の髪の人はそう口にして、ずずっとお茶をすすった。
ヒロもお茶を飲もうとして、待てよ、と思った。
「ねえ、おばさんたち、だれ?」
この島には、じいちゃんとばあちゃん以外の人は、暮らしてなんかいないはずだ。
「ああ、そういえば自己紹介がまだだったか。私の名は恵子(けいこ)。この神社にまつられている神だ。で、こっちは神歩。まあ、私の付き人みたいなもんだ」
青色の髪の人、恵子は、黒髪の女性を指さした。
神歩は、よろしくね、と言い、ぺこりと頭をさげた。
「で、そういうおまえは誰なんだ」
人さし指という言葉のとおり、恵子の指がヒロにむけられている。
「ぼく? ぼくの名前は美島広夢だけど」
「へえ、美島姓か。となると、この島の人間だな」
恵子の言うように、この島の出身の人は、苗字が美島の人がやたらに多い。
今は島の外に住んでいるので、ちょっと違うような気もしたが、ヒロはこくんとうなずいた。
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