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「あいわかった」
なにがわかったのか、恵子は腕を組み、うんうんとうなずいた。
ヒロはそこで、はっと思った。
「ねえ、神さまってなに? この島の人なんでしょ? ぼくをからかってるんだ。どうしてそんなうそをつくのさ。いて、いてててっ!」
「おまえはまず、目上の人に対する口の聞き方に気をつけろ」
恵子はヒロの口の端をつまんで、うにぃと引っ張っている。
「ご、ごひぇんひゃふぁい」
ヒロは痛みに耐えながら、必死になってあやまった。
「あの、恵子さん。それぐらいで……」
神歩の言葉で、恵子はようやく手をはなした。
やっと開放されたヒロは頬をさすりながら、ふてくされたように口を開いた。
「でもさあ、いきなり神さまだなんて言われても、実感わかないよ――いえ、わきませんよ」
恵子が手をわきわきとさせたので、ヒロは慌てて言い直した。
恵子は、やれやれと言って、言葉を続けた。
「そもそも、おまえが神体を壊すから、こんなに早く顕現しちまったんだぞ」
「しんたい? けんげん? なにそれ」
そんなことも知らないのか、とため息をついている恵子に代わって、神歩が説明を始めた。
「顕現というのは、神さまが人の前に姿をあらわすことよ。広夢くんが、神さまにとって大切なもの、ご神体である鏡を割ってしまったから、私たちは眠りから目覚めてしまったの」
「そうだったんですか。ごめんなさい。ぼくのせいで……」
「あら、いいのよ。子どもが元気なのは、平和な証だもの。きちんとあやまったんだから、恵子さんももう怒ってなんかいないと思うわ」
神歩の優しい言葉に、ヒロは頬を赤くそめて、こくんとうなずいた。
「おまえさ、人を見て態度をころっと変えるのは、どうかと思うぞ」
その様子を見ていた恵子は、ヒロのことをぎろりとにらんだ。
「それにだ。もう怒ってはいないが、許してはいないぞ」
「え、そんな」
「恵子さん……」
恵子の思わぬ発言に、ヒロと神歩は顔を曇らせた。
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