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「それはそうだろう。わざとじゃないとはいえ、おまえのせいで私と神歩は眠りをさまたげられたんだ。それ相応の罰を与えんと、お互い寝覚めが悪いだろ」
恵子は、口の端をあげてにやっと笑った。
別に、罰なんかなくても、ぐっすり眠れるのになぁ。ヒロはそう思ったが、さすがに言わないでおいた。
「それで、恵子さん。この子に、どのような罰を」
心優しい神歩は、困った顔で、恵子に続きをうながした。
「うーん、そうだな」
恵子は腕を組んで周囲を見回すと、うへっと顔をしかめた。
「よく見ると、この神社はひどいことになっているな。宮司はどうした、巫女はいないのか」
そんなことを聞いてくる。
「どっちもいないよ。というより、みんなこの島から出てっちゃって、残っているのはじいちゃんとばあちゃんだけだもん。ぼくだって、夏休みだからきただけだし」
「そうか、そんなことが……」
それっきり、恵子は目を閉じて、考え込んでしまった。
退屈したヒロは、お茶を飲んでみた。少し冷めてはいたが、すっきりとしていて、香りもよく、とてもおいしいお茶だ。
「おまえ、夢奈という名前の、生まれて数ヶ月の妹がいるだろ」
恵子は目を開くなり、突然、そんなことを言った。
「え、いますけど。なんでわかるんですか」
「私は神だからな。今、見てきた」
「は?」
いきなりわけがわからない。いったい、どこでなにを見てきたというのだろう。
すかさず、神歩のフォローが入った。
「神さまっていうのはね。すべての場所、あらゆる時間にいらっしゃる存在なの。だから、知ろうと思えば、どんなことでも知ることができるのよ」
恵子はこっくりとうなずき、続けた。
「神歩の言う通りだ。私はなんでも知ることができる。おまえが周りからヒロって呼ばれていることも知っている。な、ヒロ」
さすが神さま。ずいぶんとむちゃくちゃな能力をお持ちだ。
ヒロがびっくりしていると、恵子は話を続けた。
「で、罰についてなんだが――」
恵子はもったいつけて、ぐいっと前に乗り出した。
いきなり顔が近づいて、ヒロはどきっとした。
恵子の口が、ゆっくりと開かれる。
「おまえ、この神社で働け」
そんな言葉が飛び出てきた。
「わあ、それはいいですね。助かります」
恵子はにやにやと、神歩は上品に笑っている。ただヒロだけが、ぽかんと口を開けていた。
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