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「え……真琴さん、働くんすか」
夕方、陽介さんの会社の近くで待ち合わせて、二人で小さな定食屋に入った。
食事をしながら、昼間思いついたことを話す。
心配はしたとしても、それほど反対はしないだろうと思っていたのに、陽介さんの反応は余り良くなかった。
彼は天丼の大きなエビに噛り付きながら、考え込んでいる。
「いけませんか」
「や、そんなことはないっす。ただ、贅沢は出来ないけど、俺の給料だけでもなんとかならないかな、と……無理して欲しくなくて」
「お金のことじゃないんです。時間があるなら一度ちゃんと働いてみるべきかなって……ほら。僕は佑さんとこしか経験がないでしょう」
「そう、すね」
「ウェイターとか。接客なら経験もあるわけだし……。あ、勿論昼間だけで探すつもりです。平日だけ、はちょっと難しいかもしれないけど、土日のどちらかは休めるところならあるんじゃないかと思って」
陽介さんは、心配性だ。
だから余り心配をかけないように、慣れた職種であることと、時間も陽介さんとすれ違わないようにする、と説明したのだが。
彼はなお一層、眉尻を下げてしまった。
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