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本当に心配してくれているのだろう。
優しいけれど低いトーンの声に、つい押し黙る。
僕はてっきり佑さんとこ以外で働くには頼りない、とか、そういう風に思われているのだと思ったが。
そうではなくて、彼は、僕が女性として人前に出ることを心配してくれているのだ。
これまでの経緯を思えば当然のことだ。
「わかってます。だから、服装が比較的自由なとこか、スカートじゃないところを探そうと思って」
「男のフリさせてくれてたのは佑さんの店だからで、他の店では多分、無理です。従業員は、女の子ばっかりじゃないすよ?」
「も、ちろん。わかってます……けど」
とは言ったけれど。
男の格好さえしていたら、雇い主は知っていても他の従業員にはバレないだろうと、甘く考えていたのも事実だった。
だが、仕事に就く際他の従業員に紹介されるだろうし、僕の性別を黙っていてくれと頼むこともおかしな話だ。
陽介さんの言ってることは、尤もだった。
僕は未だに、陽介さんや佑さんがいる場所以外で性別を偽らずに男の人と関わることをしていない。
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