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箸の止まってしまった僕に合わせてか、陽介さんも一度箸を置いた。
「今までより外に出ようとするのは本当は良いことだとも思うんです。けど、すんません。俺の心配し過ぎだとはわかってんですけど……」
「……いえ。僕が考えなしでした」
心配されて当然だ。
佑さんと陽介さんだけでなく、最近では僕の性別を知る人が増えていたから、気が緩んでいたのかもしれない。
それも、佑さんや陽介さんの目の届く範囲でしかなかったのに。
僕が女として外に出たとしたって、特別何か悪いことが必ず起こるわけじゃない。
それは僕も陽介さんも重々わかっている。
ようは、僕がしっかりすることができればいいんだ。
そうすれば、いずれ陽介さんも安心してくれるはずだ。
そう納得はしたものの、ついため息は漏れる。
陽介さんには、落ち込んでいると伝わってしまったらしい。
焦ったように、彼は僕の手を握りしめた。
「真琴さん」
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