0人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
水の音が聴こえる。瞼が重い。身体も怠く、このまま意識を手放そうとも思った。だけどやめた。
起きなければならない。
どうしてこんな硬い所で横になり続けなければいけないんだ。節々が痛くなってしまうだろう。
重たい瞼をこじ開け、腕に力を込める。
「え……」
寝耳に水とはまさにこの事だろう。瞼の重さも体の怠さも吹っ飛んだ。
「意味分かんないんですけど、なんで甲板で寝てるのよ!?」
こんな所で寝る趣味ないし。そもそも船に乗った覚えもない。頭の中は何時、何処、何で、そんな疑問で一杯で辺りを必死に見渡した。
そこまで大きくない甲板と、蒼く広い海。少し靄がかかって朧月夜に赤みのある月。船の窓からは淡く光が漏れている。それらに照らされた白いワンピースに束ねた二つの黒い髪が立ち上がろうとしてハラハラと肩を滑り零れる。私はこんな服もってはいない。
最初のコメントを投稿しよう!