メザメル。

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目が見えないのが難点だが紳士的な対応なので良しとした。 と思ったところで彼は帽子をずらしてダークブルーの瞳を輝かせるのだ。 「飛ばされないように深くかぶっていたのですが、怖がらせてしまった様で。申し訳ありません。私はこの船の者でして、お客様をお迎えに参りました。」 そういうと優雅にお辞儀をする。ついつい見惚れている間に「こちらです」と言って先へ歩いて行く。私は犯罪かと思っていたのだ。こんな店知らないし、来た覚えも、来ようとした記憶もない。甲板でお客様が倒れているいるのも、それに気付いて迎えに来るもの可笑しい。百歩譲って倒れていても、すぐ見つけて室内に横にしとくべきだ。 「どうかされました?」 いつの間にか立ち止まっていたらしい。数メートル先、明かりが漏れない鉄の扉の傍らに彼は典雅に厳然と待ち構えている。
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