俺の妄想

6/36
前へ
/36ページ
次へ
 それでも毎日のように迷子と対峙しなければならない。  未だに緊張から解放されることはない。どう少しは慣れた? 周囲にそう聞かれる度に、まだ慣れないです、と返事をしていたが、果たして慣れの問題なのだろうかと最近になって思うようになった。  学生時代から良くとっつきにくいと言われ続けていた。怒ってるのか? 何か不機嫌にさせた? 俺自身は極めて平常心なのに、そう言われる度に、人当たりの良い人間が羨ましくも思った。  自覚があったから、事務方に進むことにした。花園観光に入社することが出来、本部で経理に配属されたのだ。貸借対照表、損益計算書。毎日、数字に囲まれていた。  人と会話をするのは上司に報告する時くらい。あとは朝の挨拶。昼休みの団欒。退社後は最低限の人付き合いをそつなくこなした。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加