片腕の行方

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  〈05〉  目が覚めるとベッドの上にいた。体を起こしてあたりを見ると、私が最初にいた部屋だとわかる。イリアスが部屋に運んでくれたのだろう。お礼を言わなくては。 「……暗い」  部屋は暗く、今が夜であることがわかる。カーテンを開けて外を見ると、真っ白い街に月光が降り注いでとても綺麗だった。 「体の痛みは、ない」  あれだけ痛かったのに、今では不自然なくらい体の調子が良い。これがこの世界の存在として書き換えられたということだろうか。 「そうだ、数字」  来訪者の体のどこかに現れるという数字。確か私の数字は顔に現れたんだっけ。ベッドを降り、姿見の前に立つ。見ると、右目の下に青っぽい色で121と書かれていた。 「なんて中途半端な」  自らに現れた数字に不満を漏らしつつ、私は部屋を出た。螺旋階段は上下に伸びていて、この家には三階か屋上があることが推測できる。耳を澄ますと、上の方から水をかき混ぜるような音が聞こえた。おそらくイリアスは上だろう。  階段を登るとすぐに、彼を見つけた。そこは屋根裏部屋のようなところで、壁はなく 一階や二階と違ってとても狭い。照明は点いておらず、天窓から降り注ぐ月明かりが唯一の光源である。彼はそこで絵を描いていた。大きなキャンバスに向かい背中をこちらにむけている。 「ルミナスの背中の羽はとても綺麗だった」  彼は言った。どうやら私がここに来たことに気付いていたらしい。 「絵を見てもいい?」  彼は何も言わずに振り向き、座っていた椅子をずらして私に絵を見せた。  
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