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胡坐を掻いた女性の絵だった。胸まで届く栗色の髪で、唇の右側に黒子がある。目を閉じ、薄く微笑んでいる。その背中には一対の大きな、鳥のような白い羽があり、床にも数枚の羽が落ちている。背景はどうやらこの屋根裏部屋のようだ。
奇妙なことに、私と同じような、死装束のように真っ白な服を着ていた。
「二年と少し前までこの家にいた女だ。こいつに見覚えや心当たりはないか?」
私は首を横に振った。彼は少し残念そうに目を伏せてから、再び絵の中の女性を見つめた。その目は寂しげで、今にも壊れそうで、何か言ってあげたくて……。
「……この人は、あなたの大切な人?」
「ああ、そうだ。俺はこの女を待っている」
「そっか、なるほど。あなたはすごい絵描きだ」
彼は不思議そうに私を見た。内心、こいつは何を言っているんだと思っているのだろう。
「その女性に対する好意、会いたくても会えない切なさ、いつか会えると信じる気持ちが伝わるような、そんな絵だと私は思う。絵に疎い私がそう思えるんだから、きっとあなたはすごい絵描きだ」
驚いたような表情を見せてから、私から目を離し、彼は再び絵筆を取った。
「……やっぱりお前は変な奴だ」
彼は後ろを向いてしまい、顔を見ることはできない。どんな顔をしているか気になるが、今は絵の邪魔をしたくないので、部屋に戻ることにしよう。
「今はだいたい夜中の二時だ。明日は街を案内してやる。今日はもう一度寝ておけ」
絵を見つめたまま彼はそう言った。
「うん、そうするね。私をベッドまで運んでくれてありがとう。おやすみ、イリアス」
彼は何も言わなかったので、私は部屋に戻ってまた眠ることにした。私がこの街に来て、一日目の夜のことであった。
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