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その建物は通りの建物の遠く後ろの方にあった。他の建物よりも倍以上大きく、大きさの違う角砂糖を三つ重ねたような形をした建物。側面は眩しくなるほど白色で、銀色の線で幾何学模様が描かれている。
「わかっていることは、あれはこの街ができてからずっとあそこにあるということだ」
神々しさと禍々しさを併せ持ったそれは見れば見るほど異質で、私は目を離せない。朝の弱い光を浴びて、それは白く輝いているように見えた。
「白銀の塔。街の人はあれをそう呼んでいる」
「……白銀の、塔。何のための塔なの?」
「そこにある目的はわからないが、あそこには一人の少女が住んでいる。来訪者はこの街に来てから一度はそいつに会いに行かなくてはいけない決まりだが、お前は明日でもいいだろう」
塔に住む少女。来訪者は彼女に会わなくてはいけない。ということはその子はこの街では何かしら重要な意味を持つ人物なのだろう。それも、私のような来訪者にとって。
「へえ、どんな子なの? 可愛い?」
お道化ながらそう聞くと、彼は呆れ顔で前を向いた。
「……今の話を聞いてそんなことを聞いてきたのはお前だけだ」
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