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「私はシイナです。あなたと同じ来訪者で、この街には二年くらい前からいます」
私は慌てて立ち上がり、自己紹介をした。
「えっと、私はサキです。歳は19、昨日この街に来ました」
「うん、よろしくね、サキちゃん」
人形のように愛らしい笑顔を見せてくれた彼女は、エプロンを脱ぎ、座りましょうと言って私の隣に座った。私もそれに従って座る。ほのかに花の香りがする。
「じゃあシイナ、頼んだ。電話借りるぞ」
イリアスはそう言ってお花屋さんに入っていった。
「あのお店はシイナさんの?」
「そう、あれは私のお店なの。シイナで言いよ」
シイナはうふふと可笑しそうに笑って、私を見た。
「車はないのに電話があるなんて、変な街だと思ったでしょ?」
確かに。イリアスはこの街には複雑な機械はないって言っていたのに、電話はあるんだ。
「この街のことはイリアスにある程度聞いたと思う。私は彼に、あなたに来訪者のここでの暮らしについて教えてあげてほしいと頼まれたから、これからそれについて話すね」
「それはイリアスが直接話すのではダメなの?」
「んー、ダメではないけれども、イリアス以外の人と関わりを持つことが今日の目的だから、ちょっと意味が無くなっちゃうかな。その点も含めて教えてあげるね」
彼女は一度あはは、と照れたように笑った。
「あはは。この説明、私も初めてするから緊張しちゃうよ」
よく笑う、可愛い人だった。
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