◇ シイナの話

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  〈05〉  シイナはわざとらしい咳払いをしてから話し始めた。 「まずはこの世界に来てしまった来訪者その物について話すね。来訪者はもといた世界の存在から、この世界の存在に書き換えられます。この時の苦痛はもう味わったよね?」 「うん、もうあんなに痛いのは嫌だ」 「あはは、そうだね。あれはかなり辛いものだったね。その存在の書き換えの際に体のどこかに現れた数字、これは神から与えられた寿命とされているの。だからこの数字は少しずつゼロに近づいていく。寿命が減っていくようにね。数字の量や減る速さは人それぞれだから、自分の減るペースとかは把握しておいた方がいいよ。  それと、この数字はこの世界の住人と来訪者を見分けるポイントにもなるから、目の前の人が住人か来訪者か悩んだら、まずは数字を探すといいよ」  私は無意識に右頬を触っていたことに気付く。神から与えられた寿命。ではこの世界の神とは誰か。  ちなみに私はここにあります、と言ってシイナはシャツをめくって、お腹の左側を私に見せた。数字は25、レモンイエローの文字で書かれている。 「サキちゃんは右頬にあるんだね。すごくキュートだよ」  どうしよう。すごく照れる。 「来訪者がこの街に来てしまう理由はわかっていない。でもそれぞれの来訪者がそれぞれに大きなトラウマを抱えている。このことはイリアスに聞いた?」 「うん。昨日、存在が書き換えられる直前に」 「ずいぶんギリギリなタイミングで言ったんだね。彼らしいよ。サキちゃん、あなたのトラウマは、なに?」  私の、トラウマ。ちょっと考えてみたけどわからなかった。  
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