2人が本棚に入れています
本棚に追加
「私からのお話はこれでおわり。何か聞きたいこととかある?」
「じゃあ、ちょっとだけ」
「はい、どうぞ」
「一つ目、シイナは何歳?」
「イリアスと同い年よ」
24歳なんだ。もっと近い年齢だと思った。
「もしかして彼の年齢を知ってる?」
「うん」
ひー、と彼女は小さく悲鳴を漏らして、顔を隠した。
「年の割には子供みたいって思ってるんでしょそうなんでしょ!」
「あはは、そんなことないよ」
しばらく悶えた後、恥ずかしそうに微笑みながら、シイナは私に尋ねる。
「一つ目ってことは、聞きたいことはまだあるの?」
「うん。あと二つ」
「なに?」
私は、本当に聞きたかったことを尋ねる。
「『来訪者にとってトラウマというのは、その人の形その物』という言葉の、『その人の形』とは具体的にどういうことか。それと、この数字がゼロになったとき、私たち来訪者はどうなるのか」
土に水がしみ込むように、彼女の微笑みが消える。
「イリアスはあなたを変な奴と言っていたけど、こういうことだったのかな」
彼女の雰囲気が変わった気がする。イメージは、好奇心を宿した無垢な少女から、探究心を宿した事象を観察する研究者。彼女は再び笑みを浮かべて、私の顔をじっと見た。
「サキちゃんはすごく侮れない子だね。その質問には私じゃない人が答えてくれるよ。多分、次に合わせてもらえる男の人とかに」
「私の、この街での関わりを増やす一環で?」
「そう、きっとその人の方が適任だから。うふふ、サキちゃんはすごく面白いね。あなたのトラウマを知りたくなって来ちゃった。この街での暮らしに何か困ったことがあったら、私をお姉ちゃんだと思ってなんでも相談していいよ」
お姉ちゃん。なんだかとても、懐かしい響き。
「うん。ありがとう。今度お花買いに来るね」
話が終わったのを察してか、イリアスがお店から出てきた。
「シイナ、ちゃんと話せたか?」
「うん、すごく緊張したけどね。うふふ、楽しかったよ、サキちゃん」
「うん、私も」
行くぞと言ってイリアスは歩き始めた。シイナが言っていた男の人のところだろうか。
「またね、サキちゃん」
「うん。また」
シイナに軽く手を振って、私たちは広場を後にした。
最初のコメントを投稿しよう!