片腕の行方

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  〈01〉  初冬のある日、冷めたい雨の降るスクランブル交差点。信号を待っていると遠くの空に何か青い物を見つけた。灰色の空に浮かぶそれはとても綺麗だったが、どうやら他の人は気づいていないようで、目の前の信号が青になるのをひたすらに待っていた。  青になる。  私はその青い何かを見失わないように空を見ながら歩いた。何度か通行人と肩がぶつかったが特に気にしなかった。よく見るとそれはひらひらと落ちているようで、私はそれの正体をどうしても知りたくていつの間にか走り出していた。  その、何か青いひらひらした物を追いかけたらこの街に来ていた。  
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