これからもずっと

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 同じ時を過ごすはずだった幼なじみは自分よりも年を取り、幼なじみだけでなく世界にも置いていかれた気分になった。だが、新しい出会いがあり、あの件がなければこの時間がなかったとも、思えるようになった。  なにもかもが、悪いことばかりだったわけではない。この十年で世界はずいぶん変わったけれど、達志の周りは少しだけ、賑やかになっただけだ。 「あ、おはようございますタツシ様」 「うん、おはよー」  着替えてリビングに降りると、同居人であるリミが笑顔で挨拶をしてくれる。リミと、彼女のお世話係というか姉のような存在セニリアは、一人の母が寂しくないようにいつからかこの家に住んでいた。達志が戻ってきてからも、それは変わらずだ。  母がいて、リミがいて、セニリアがいて……ただ、ここにいてほしかった妹は、達志が眠っている間に事故で亡くなってしまった。それだけが、悔しくてならない。  しかし、過去はどうしたってやり直せない。妹の最期は看取れなかったが、せめてお墓に行くことができたのは幸いだろう。
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