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「それにしても、ようやく慣れてきた気分」
朝食を食べながら、一人口の中で呟く。以前は、由香が達志を迎えに来て、一緒に家を出て、途中で猛やさよなと合流していた。以前……ただ、達志にとっては少し前でも、現実では十年前のことだ。
十年立てばそれぞれの関係も変わる。猛とさよなはそれぞれ仕事をしている。由香はまさかの教師になり、達志と未だ関係のある職場ではあるが、さすがに迎えに来る、なんてことはなくなった。
今では、基本的にはリミと登校だ。
「じゃ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
息子と母の、何気ない会話。しかし、達志にとってはあまり時間が経ってないと思っていても、母にとっては十年越しのやり取りだ。初めはこのやり取りの度に、涙を流していた。
リミとセニリアも「行ってきまーす」「いってらっしゃいませ」とやり取りをしている。
家を出て、いつもの通学路を通る。何気ない話をリミとしながら、学校に近づくにつれ生徒が増えていく。見知った顔も、ちらほらだ。
教室に入れば、そこには登校してきたクラスメートが半分ほどいる。達志に話しかけてくれる者もいれば、達志から話しかける場合もある。当初は、混乱こそしたが今では普通に話すことができている。
いろいろな種族がいて、毎日が飽きることのない。そんな日常。
「みんな、おはよー」
ホームルームの時間になると、副担任である由香が入ってくる。いつもは担任の教師が行うのだが、たまに副担任である由香が行うこともある。
幼なじみのあの由香が、今や教師になっている……不思議なものだ。それでも、今でも関係が切れていないのは素直に嬉しい。
大きくなった幼なじみ。クラスメート。リミ。そして、転校してきたリミの姉リマ。賑やかだった日常は、これからさらに賑やかになっていくことだろう。
これまでもこれからも、変わったものもあるし変わらないものもある。達志の平凡な日常は、少しだけ変化をもたらし、これからも続いていく。
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