第1話 幻の曲

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「え?そんな美味しいことしてるの!?」 奈々が驚いたように叫ぶ。 「水臭いよ晶ちゃん。言ってくれればあたしたちも練習付き合うのに」 幸子ちゃんがぷうと頬を膨らませる。 二人に黙っていたのは申し訳なかったが、あたしは歌が上手いというわけではなく、人前だとどうしても上がってしまい、いつものように本領を発揮できない。 「ごめんね。その、恥ずかしかったの。あたし、歌うのは好きだけど上手いわけじゃないし、人がいると上がっちゃって声すら出せなくなるの」 そう答えたあたしに、奈々が首を傾げた。 「そうなの?でも一人で歌の発声練習しているってことは、晶。あんた、プロのボーカル目指してるの?」 痛いところをつかれた。 目指しているわけではない。ただ、歌うのが好き。そして、三年前の彼のような歌を歌いたい。
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