第1話 幻の曲

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そう、奴の席はあたしの斜め後ろだ。 いやだ、いやだ、といつもそちらには視線を合わせないようにしている。 だが今日はさっきの事もあり、少し気になり、そろりと彼の方に視線を向けた。 如月麗慈は眠たそうにあくびを噛み締め、ゆっくりとあたし達のいる席に近づいてくる。 さすがに近くまで来たら、奈々も口を閉ざしていた。 彼はすっと横を通り過ぎた。ほっとしたのも束の間、今日は本当に運が悪い。 通り過ぎたと思った矢先、彼の足が机の横にかけていた通学用鞄に当たる。そのまま口を開けていたため、鞄の中に入れていたウォークマンが落ちてしまう。 ガシャンッ!と落ちて、それに彼の足が当たり、ウォークマンはクルクルと回りながら後ろの方へ滑って行った。 「あ?」 「あ!!」 あたしと奴の声がハモる。 驚いて声を上げたあたしと、何をしたのかわからないような奴の声。
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