第1話 幻の曲

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ぽかん、と後ろに滑っていったウォークマンを見つめる。 「ちょっと!あんた!」 すると奈々が怒ったように、声を上げた。 それにハッと我に返り奈々の方に顔を向けると、彼女は立ち上がって、あたしの横後ろに立っている如月麗慈を睨みつけていた。 ひいっ!!奈々!あんた、なにしてんの!? 顔が青ざめるのが分かる。 「あんた、今蹴ったわね」 奈々が尋ねる。 「あ?なんだお前」 突然怒鳴られた彼は眉をひそめ、奈々を冷たく見据えた。 「この子の鞄にぶつかったよね。そんで今、なんか蹴ったじゃん!謝りなさいよ!」 イライラした様子で奈々が怒鳴る。 ちょっとちょっと奈々さん!!あんた、あたしの話しないでよ!ああ、幸子ちゃん!お願いだから止めて! 横にいる幸子ちゃんに救いを求めるように彼女の方を振り向くが、彼女も彼女であたしと同じように青ざめ、オロオロしている。 如月麗慈は奈々の態度に苛ついたのか、チッ!と舌打ちした。 「なんで俺が謝るんだ?ぶつかったって、わざとじゃねぇよ」
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