第1話 幻の曲

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奈々が心配そうに言った。 「ん?ああ、如月麗慈のこと?大丈夫よ」 あいつのことだ。報復されるんじゃないかと、奈々も心配していたらしい。 笑ってそう言うと、奈々はちゃうちゃう、と首を振った。 「如月麗慈のこともそうだけど、あんた、あのとき確かに何か落とされて蹴られたじゃん。見つけなくて良かったの?」 奈々の言葉にあたしは一瞬キョトンとして、すぐにハッと思い出して青ざめた。 「あああ!?しまった!忘れていた!」 なんてことだ! すっかり忘れていたよ! ウォークマンの中には、あの大事な曲がインプットされている! 慌てふためくあたしに奈々は驚き、あきれた。 「あんた、忘れていたのか。なら早く行った方がいいじゃないの?今なら教室に誰もいなさそう!」 「う、うんそうだよね!じゃあ、あたしは先に教室に戻るわ!奈々はどうする?」 「あたしはもうちょっとここにいるよ。そしたら部活に顔を出すわ」 奈々は美術部だ。
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