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前をちゃんと向いていなかった。
目の前が陰り、気づけば誰かにぶつかった。
「す、すいません!」
条件反射で一歩後ろに下がり、頭を下げて謝る。
刹那、周りにいた女子生徒から悲鳴がわいた。
ギョッとして顔を上げると、目の前には後光を背負ったキラキラした美しい男子生徒が立っていた。
「……」
彼は無言でこちらを見下ろした。その眼差しは氷のように冷たく、蔑んでいた。
びくりと全身を強張らせた。
「レイジぃ、大丈夫ぅ??」
右隣りで腕を組んで一緒に歩いてきたオシャレで派手な女子生徒が甘えた声で男子生徒に声をかけた。
あたしは、彼を知っていた。
同じ学年で、女好きで喧嘩強い元ヤンだと。
モデルのように彫りの深い顔立ちに、すらりとした手足。百八十軽く超えたタッパに、無駄な筋肉がない均整の取れた肢体。
同い年なのに大人っぽくて、妙な色気がある。
名前は、如月麗慈(キサラギレイジ)。
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