第1話 幻の曲

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「嘘つけ!自分が作った弁当が嫌じゃなく、購買に行くのが目当てでしょ。あたし、見ちゃったんだから」 ニヤニヤする彼女に、首を傾げる。 「うんうん。私も、実は昨日見ちゃった。晶ちゃん、購買の前に視聴覚室に寄ってるでしょ」 どきり、とした。 本校舎の一階から第二校舎の渡り廊下付近に購買部があり、その渡り廊下を渡って第二校舎には視聴覚室がある。 いつもあたしは内緒でその視聴覚室に必ず寄っていた。その視聴覚室の奥は防音室があり、ピアノだけでなくドラムやギターに、マイクが置いてあり、小さなスタジオがある。 いまは軽音部がないが、昔軽音部が使っていたものがそのままおいてあった。 この椿ヶ丘高等学校には音楽室もあるのだが、音楽室では吹奏楽部が占領しているため使えないのだ。 先生に頼み、昼休みに許可を頂いている。 少しだけ、防音室が使いたいと。あたしはそこで発声練習をしていた。
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