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星の迷宮
霧の中の誰も知らない島は
星空に浮かぶ
私は浮遊体になって
霧の中に向かう
恐れと説明できない淡い期待
いつかの心の様に揺らぐ
黄色や紫や緑や橙色の
光の粒の集合体が今の私
ゆらぎゆらいで
生きている時のようには
目的の場所にはたどり着けない…
いや
生きていた時も思うようには
目的の場所にたどり着けなかった
それでも
漸く島の入口に立ち…
暗い悪意の美しさに目を奪われる
円形の城がある
ただとてつもない大きさの城
巨人でも棲んでいそうな
或いはその中にひとつの世界を内包したような
黒いシルエットにあたる光が
時折揺れて瞬時まみえる
石垣、瓦、漆喰
鉄柵の仕込まれた窓から漏れる灯りは
すべて深紅
そこで初めて
自分が開かれた巨大な門の
真下にいる事に気付く
様々な色の薔薇が美しく刈り込まれた庭は遥か彼方まで続きその奥に巨城が座す
燈籠の炎は蒼く
数えきれない数
私は実体化する
グサグサ…
左の眼球と左脚に激痛が走る
油断している私に
突如向けられた矢じり
(こんな事には馴れている)
噴き出す血は快感を伴い
ギャー…
己が咆哮で自分の鼓膜を破壊する
悶絶して倒れ
また自分の何か
が壊れた事に
後悔して
ようやっと
両脇に立つ人物に気付く
右側には見るからに優しそうな
美しいお婆さん
どこか自分にも似ていて…
体内の血が落ち着く
きっと血縁の誰かであろう
問題は左側に立つ異形の怪物
側にいるだけで鳥肌の立つ
私の倍はある体躯に頭は牛
眼の奥に抱える嫉妬憤怒怯え虚偽
青黒い角は
螺旋に天を突き刺す様に伸びる
全身に生えた艶のある鈍色の体毛
爪は鉤のように尖り
生き物の腐爛した匂いを
香水で隠した様な薫り
ひと度嗅げば嘔吐感と陶酔という
矛盾を抱えた不安を与えられる
背中にはばたばた鴉の羽
頸にはじゃらじゃら鉄鋼の鎖
ご丁寧に…
手にはびかびか三ツ又の銛
……………………
そこで初めてこの両側の存在の
意味を知る…
なるほど
こんな奴に付きまとわれたら
人生巧く行く筈も無い…
悪意の塊…
悪魔だ
それも…程度の低い…
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