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「落ち着いてください。まだ、安心はできません」
「安心はできないとは、どういうことかね?」
国の代表者である大統領が科学者に尋ねた。
「考えてもみてください。私達とこれまで交信をしてきた彼らが、本当に私達に好意を抱いているのか分かりません。もしかしたら、贈り物と称して私達の星を滅ぼすモノ・・・例えば、毒ガスなどを送りつけたかもしれません」
「そんなばかな。いくらなんでも、毒ガスなんて。ましてや、こんな小さな箱に・・・」
大統領は笑い飛ばすも科学者は表情を崩さずに言い続けた。
「いいえ。その油断が命取りになるのです。無論、相手の星が好意的な宇宙人であったとしても油断はできません。地球と向こうでは大気が同じとはいえません。開けた瞬間に、向こうの大気中にいる地球人にとって有害な細菌であったりしたら」
「考えすぎだろう」
「向こうが意図せずに不幸な出来事が起こるのは、ここ地球でも同じです。安全だと確証を得るまでは、むやみに開けるのはよした方がいいでしょう」
「しかし、人々は宇宙人からの贈り物がなんでるのか知りたがっている」
大統領の言い分も一理ある。人々は散々、宇宙人からの贈り物を待たされ続けた。それを、危険だからといって隔離することは政府が独占しようとしているのではないか。そんな疑いをもたれてしまう。ましてや、宇宙人との交渉記録は全世界で公開されている。一国だけが、それを独占しようとするなら忽ち、争いの種になりかねない。早急に箱の中身は調べ、一般に公開しなくては。
話し合いの末、箱は密閉された強化ガラスケースの中で開けられることになった。万が一、中に有害な物質が入っていたとしても外部に蔓延するのは最小限に抑えられる。
遠隔操作用によって箱は人々の前で開けられる。いったい、箱の中には何が入っているのか。人々は固唾を呑んで結果を待った。
遠隔操作で動くアームががっしりと箱を掴み上蓋を開ける。真空の中でも耐えられるようガッチリと密閉された箱の蓋がゆっくりこじ開けられる。
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