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「先輩、これって......」
鉄の壁で完全に覆われた研究室に、若い青年の声が虚しく響く。青年が見下ろしているのは、少し色褪せた硬いベッドに身を置く一人の少女である。
ただし、その少女に生気はない。
「あぁ、また失敗だな。......流石に疲れた。少し休憩しよう。御幸君、コーヒーを淹れてくれるか?」
答えたのは同年代とは思えないくらい疲れきった表情の女だ。
「分かりました。先輩は向こうで休んでいて下さい。ここは空気が汚いですから」
「すまない、迷惑ばかり掛けて」
「そうですよ。その為にもいい加減、無茶は止めて下さいね、九条先輩」
それだけ告げて、御幸は無機質な壁に覆われた部屋から退出した。
「はは......やっぱり君には叶わないな。御幸君」
分厚いドアが閉まる音と、九条の声が、シンクロするように重苦しく響いた。
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