side-K

13/13
前へ
/34ページ
次へ
「ごめんとか、ありがとうとか……言った方が良いような気がするんだけど、なんかしっくりこないから、なんも言わない」 「……」 「卒業まで後半年だし……団体行動は苦手だけど今のクラスは、いいやつらばっかりだと思う。オレのこと、ちゃんと、クラスの一員て考えてくれてるし」 「当たり前だろ、そんなん」 「うん、だから。柏木とギクシャクしたくない」 「っ……」 「オレらがギクシャクして、クラスの空気、壊したくない」  だから、と紡いだ早川が、あの笑顔のままでオレを真っ直ぐに見つめるから。  泣き出しそうな自分を叱咤して、ゆっくり真っ直ぐ見つめ返す。 「──今まで通りだ」 「ぇ?」 「睨んだりしない。ちょっかいかけたりもしない。お前とは、今まで通りにする」 「…………うん」  あっさりと頷いて笑った早川に、ほんの少し淋しいと思ったのは胸に隠して。 「じゃあな」 「うん。──また明日」  早川が、頷いて続けた言葉に。  一瞬本当に、泣いたと思う。  今まで聞いたことのない、だけどたぶん一番聞きたかった言葉。  不意打ちの言葉に、けれど何でもないふりを装って手をひらひら振ったら。  早川の横をすり抜けて、バタバタと階段を駆け降りた。  *****
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

119人が本棚に入れています
本棚に追加