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走り去った柏木を見送った後、
「二人っきりにならないでって、言わなかったっけ?」
タシタシと歩いてきた隼人が、何もかも分かってるみたいな顔で苦笑しながらオレの頭をわしっと掴む。
「ずっと階段にいたんでしょ?」
二人っきりじゃないよと笑ってみせたら、ふん、なんてわざと拗ねて鼻を鳴らした隼人が、掴んだままだった頭をわしわし撫でてくる。
「ホントに咲哉は、可愛いこと言ってくれるよね」
「でしょ」
「──っとにもう」
こちん、と。
おでこに隼人のおでこが軽くぶつけられて、至近距離で見つめてくる真摯な目に縫い止められる。
「約束守んなかった子にはおしおきだね?」
「おしおきって?」
「さぁ──なんでしょ」
にやり、と意地悪く笑った隼人が、電光石火のキスを唇に落として。
「ちょっ、ここ、がっこ……っ!」
わたわた引き離したはずのおでこは、だけど体ごと抱き寄せられてまたすぐにひっつく。
「ホントに。咲哉って苛めたくなるくらい可愛いから、困っちゃうね」
にこりと笑う隼人の顔は、唇は綺麗に笑ってるのに目がとんでもなく妖しい光に満ちていて、背中がゾクゾクする。
「ここ、がっこ……」
もう一度、さっきよりも小さく呟いた声に笑った隼人が。
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