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「知ってるって、言ったらどうする?」
耳元。
意味深な吐息と一緒に吹き込まれて、膝が砕けそうになる。
「ば、っか……!」
ぐぃ、と。
渾身の力で胸を押そうとしたはずなのに、呆気なく隼人の手に腕を取られた。
「こんなんで、よくもまぁ二人っきりになってくれたよね」
「はなせ、って」
「柏木におんなじことされてたら、逃げられなかったよ?」
「はな、せ……っ」
「だいたい、今朝だってさ」
「けさ?」
「柏木と! 目ぇ合った時、照れたみたいに顔逸らしてた」
「あれはっ……すき、とか……思われてたのかって……ちょっと照れ臭いっていうか、気まずいっていうか……」
「ふぅん?」
腕を掴む手に、ギリギリと力を込められて。
「隼人、いたい」
「──分かってんの?」
怒ってるって。
低い声で囁いて、ぽい、と投げ捨てるみたいに腕を離されてよろめく。
「はやと……っ」
「帰るよ」
「はや」
「帰ったら、今日はもう容赦しないから」
「はや、と?」
「祭りの日みたいに、なにもしないでは、帰してやらないから」
「──っぁ」
「可愛がってあげるよ、たっぷり」
振り向いた妖艶な笑顔に、逆らえずに喘ぐ。
「かわい、がる……」
「そ。咲哉がいったい誰のものか、教えてあげるよ」
もたつく足でついていくオレを、ぐい、と抱き寄せた隼人がまた。
目を逸らすことも出来ないほどに強い視線でオレを捕らえた。
「二度と、オレから離れられないように、ね」
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